今、Twitterで話題を集めているタップがあります。
それが鬼Tip、全く新しいタイプの牛革単層タップです。
Twitterでは数か月前から開発やテストの状況がアナウンスされており、発売を心待ちにしていた牛革タップファンも多かったはず。
そんな鬼Tipシリーズの第一弾『黒鬼』がいよいよリリースとなりますので、その特徴や購入方法などを紹介します。
この記事の内容 1.鬼Tipとは 2.黒鬼 6.黒鬼を試したいと思ったら |
1.鬼Tipとは
(1) 鬼Tipとは
鬼Tipとは牛革単層タップに樹脂を浸透させて作られた最強硬度の牛革単層タップです。
製作者は牛革タップの記事などでぬブロにも何度か登場していただいている牛王さん(名前はちょくちょく変わってて今はウシオぅさん笑)、今やTwitterで注目を集める牛革一筋の熱狂的な牛革タップ愛用者です。
鬼Tipは樹脂を浸透させた後、専用に設計した特殊な締め具でタップの部位ごとに圧力を変えて締め込むことで、牛革タップの良さである打感、打音、食いつきの良さなどは残しつつ、はずれが多い、安定するまでに時間がかかるなどの単層タップの弱点を解決した全く新しいタップになっています。
液体樹脂を含浸させて硬化させる段階
樹脂と革のハイブリッドタップはKAMUIのSAIなどブレイクタップではすでにありますが、どれも積層タップです。従来の方法では単層タップの中心まで樹脂を浸透させることはできなかったのですが、黒鬼は特殊な液体樹脂(実用新案申請中)を使うことでそれを実現しています。
下の写真は色々な含侵方法を試しているところ。最終的に一番左の方法を採用しているのですが、中心部まで液体樹脂が浸透しているのがわかると思います。
あまり長時間漬け込んでしまうと革に悪影響を与えてしまう可能性があるそうで、なるべく短時間で中心まで浸透させる方法を見つけるのに相当苦労したようです。
(2) 鬼Tipの開発コンセプト
牛王さんが目指したのは単層タップの欠点とも言える“パンク”や“ちょうちん”と言ったトラブルを極力無くし、密圧のある革質、硬くロングライフ、よりメンテナンスのかからないタップ。そして鬼Tip開発にあたって牛王さんが頭においていたコンセプトがタイトルにもある『硬いけど掛かる』ということ。
「掛かる」ってあまりなじみのない表現だと思うので牛王さんに聞いてみました。真意を曲げたくなかったので以下原文のまま載せておきます。
“掛かる”に関しては撞く点を貫く様に撞く“撞点撞き”の対義語のような意味。タップのRの摩擦とチョークの効果を使い回転力を生み出すときに使われる感じです。 伝わりにくいとするとどちらも“キレ”を産ませる表現と言う事ですね。 タップの反発力を使い撞点を貫く事で回転を与える、に対してタップの掛かりを使い手球との摩擦で回転を与える、といった感じ。ここで“球持ちが良い”と言う表現をあえてしないのは反発で撞くタップが持ちが悪いわけでは無いので使っていないと言う事です。 |
話は変わりますが、今はもう売っていないRDという知る人ぞ知る牛革単層タップがあります。
僕は使ったことがないんですが素晴らしいタップだったらしく、古くからのプレーヤーの中には今でも秘蔵のRDを愛用している人や、このタップを忘れられずに似たようなタップを探し続けているファンがいます。
牛王さんもRDを愛用していた1人、鬼Tip開発にあたりこのRDをかなり意識したそうです。
そしてかつてのRDユーザーから「これぞ待ち望んでいたタップだ!」とはやくも高評価を得ているのが黒鬼です。
(3) 鬼Tipのラインナップ
鬼Tipシリーズは「黒鬼」を含め、以下3つのラインナップが予定されています。
黒鬼(プレー用)
青鬼(プレー用)
灰鬼(ブレイクジャンプ用)
黒鬼と青鬼の違いはまた青鬼の記事の時に詳しく書こうと思います。
今回の記事では、鬼Tipシリーズのリリース第一弾となる黒鬼について解説していきます。
2.黒鬼
(1) 黒鬼の特徴
黒鬼には以下のような特徴があります。
・打感が硬い
・打音が甲高い
・球離れがはやい
・食いつきが良い
・チョークののりが良い
・スピンののりが良い
・付けてすぐ使える
・ほとんど変形しない
・メンテナンスが容易
・パンクやちょうちんのリスクが少ない
・品質が安定している
・寿命が長い(予測使用可能期間:1年程度)
僕も最終サンプルをいただいて使っていますが、黒鬼はとにかくめちゃくちゃ硬いです。最初先っぽに石が付いているのかと思いました。
そのため球離れも異常にはやく、樹脂タップかと思う人もいると思いますが、不思議なことに食いつきやチョークのりがよく、スピンも十分にのります。ミスキューしそうな印象なのにミスキューもしないです。
そして打音は甲高いです。
参考までに黒鬼の打音がわかる動画(牛王さんのTweet)も載せておきます。
2ヶ月目の黒鬼 pic.twitter.com/zjtAzTdZlI
— 鬼Tip's (@Tips02142697) November 1, 2022
独特な音なので最初違和感を感じる人もいるかもしれません。好き嫌いもあるとは思いますが、好きな人にはたまらない音だと思います。
また黒鬼は他の牛革単層タップのような変形がほとんどないため、豚革積層タップのように取り付けてすぐに最大のパフォーマンスを発揮します。
変形がないためメンテナンスも容易です。
そして製作過程で牛王さん自ら厳しく検品しているため、品質が安定しており、パンクやちょうちんなど単層タップにつきまとうトラブルのリスクも少ないです。
樹脂を含浸させて硬化させた状態
BIZENのように使い手を選ぶやや難しい部類のタップだと思いますが、使いこなせれば強い武器になることは間違いありません。
(2) 作者コメント
製作者の牛王さんから鬼Tip、および黒鬼についてコメントをいただきました。
皆さん“鬼tip’s”を楽しみにして頂き有難うございます。作者とは少し大げさですが、私“牛王”より“鬼”を楽しんで頂く上で方向性的な事を何点かお伝えしたいなと思います。 まず今回の“黒鬼”ですが、非常に離れの早いタイプの分類になるかと思います。ただし、ただ早い訳では無く早さにそぐわない手玉へのグリップ感は充分にあり先球と手玉の離れのキレイな動きを重点に締めさせて頂いております。その副産物として硬さ✕グリップ力による手玉の動きと先玉の直進性がポイントになるかと思いますが、よりその性能を発揮するにあたりシャフトとの相性と言いますか、マッチングもテストして作らせて頂きました。 より剛性力の強いシャフトとの相性がとにかく飛び抜けて良く、しっかりと締まったノーマルシャフトは元よりカーボンパイプ芯材を持ったハイテクやカーボンシャフトまで相性良くお使いになれると思います。 是非私“牛王”の言う「硬いのに掛かる」という感触を楽しんで頂ければとても嬉しい限りです。 年明け1月〜2月頃を予定している“青鬼”も現在試作段階で期待値の65%程度の実装感ですが、それを85%程の実装感まで引き上げれてのリリースになるかと思います。どちらもより良い質感の単層タップに出来ますよう絶賛テスト中ですのでもう暫らくお待ちしていただきます間“黒鬼”をお楽しみ頂ければと思います。 牛王 |
3.黒鬼テスターのインプレッション
牛王さんは開発段階で黒鬼を全国各地のテスターに送ってテストしてもらっていました。
そこでのフィードバックを反映させながら、数か月かけて黒鬼を完成させたのですが、販売品と同じ最終サンプルを撞いたテスターの方々のレビューをいくつか紹介します。
Aさん JPBA現役トーナメントプロ
最初に驚かされたのはやはりその音、甲高く硬いと分かるハッキリした音でした。
これに関しては意見も別れるところかと思いますが硬い打感や音の好きな方にはむしろ癖になるのかなと思いました。(ちなみに私は好みではありませんでした。)
更に驚いたのはそのグリップ性、これにおいては「硬さ」と「グリップ力」により手球に与える回転力は驚くほどでカーボンシャフトなどの場合オーバーパワーになる事を抑えなければならない場面もあるのではないかなと思わせる程です。
又、パワーのあるタップ特有の芯の撞点付近の球には特にその特徴が現れ非常にコントロール性能の良いタップと感じました。
球種に関してはドローに長けていてフォローの場合硬いタップの特徴として手玉が跳ねやすいと思いますが、これは丁寧なストロークをする事で幾分かは抑えられると思います。
形状も非常に変化し難く数時間撞いた程度では全く変形もせず、ミスキューに繋がる要素もかなり少ない感じでした。
総合的には
・硬いタップが好きな方
・引き玉に自信のない方
・先球との分離で手球を転がす方
・非力な方
と言ったプレーヤーに喜ばれるタップでは無いのかと思うタップで非常にバランスの取れた単層タップだなと思いました。
特設台でのコンディションにどの程度使用感の変化が有るかはまだ使っていないので何とも言えないですが、ラシャの重たい台や湿気の多い梅雨時期には特にその力を発揮するのでは無いかなと思いました。
Bさん A級アマチュアプレーヤー
硬いが食い付く。
芯の撞点でのコントロールが明確に出来る。
インパクトタイミングが明確。
引きの撞点でのコントロールが楽に出来る。
長時間の使用に対しても変形が無く調整も必要ないのかも?
撞点での動きが明確でパワフル!
しっかりとキューを振り切れる安心感がある。
硬いタップでは有るが動き過ぎる事なくコントロール性が良い。
硬いタップの中でも特に他と換えの効かない存在感!
Cさん A級アマチュアプレーヤー
ランブロス 柔らかめシャフト(座無し)+黒鬼
打感高めで球離れが速い。まさしく石の印象。
キュースピードを上げるとすっ飛んでくのでインパクト無しで送り込むストロークが必要。
先球の走りは良いが手球はひと伸び足りない感じ。
1タップ以上の撞点だとシュートに不安がよぎるのでポジションは遠目でもフリだけ合わせて取り切るシュータータイプかと思いきや、振り切ってブスタマンテの真似してゆっくり長いキュー出しのスタイルにも合った。
ランブロス 固めシャフト(座付き)+黒鬼
こちらは座の効果があって打感は木の澄んだサウンドを奏でる。
タッチも柔らかさがあり先球のスピード・手球のスピン残量もバランスがよい。
突き方も支点捻り・挟み突き・内から外に切るまで全てに対応してくれた。
売りの硬さはトーンダウンするが普通の固めのタップが好きな人にはちょうどいいかなと…
イグナイト+黒鬼
シャフト径の細さと黒鬼が影響したのか少し固めに感じる。
しかしながらそこは逆にキュー切れに繋がり面白い球が突けた。
決まった撞点を突き抜ければREVOよりも可能性を感じるがストロークの完成度がより求められている感じ。
Dさん A級アマチュアプレーヤー
これはRDで言うところのExhardですね。
硬さに反して食い付き良し!
スピンも丁度良い感じで乗る。
細身の柔らかいノーマルシャフトには打って付けのタップですね。
球離れが早いので余計に持っちゃう感じも無く、綺麗に手球が進んでくれる。
自分にとっては凄くコントローラブルな感じ。
しかも最初から硬いからこれ以上の硬化の恐れもないかと。
これ、安定供給できたらほんと安心です。
でも、寿命長過ぎるかも。
これ10個あったら10年以上タップの心配要らないかも。
Eさん B級アマチュアプレーヤー
使用時間:約4時間
仕様:MUSASHI(角芯・10山ロング)+acsspro
初めて使用した時は印象は、「硬くて反発力が強いが食いつきある」タップでした。
今回は、「どんなタップ?」ではなく「自分がこのタップで戦えるか?」を考えてた。
基本的なシュートには何の問題もない、ただただ音が甲高い(笑)
最初気になったところは、ロングの強い押しは若干手玉が跳ねる...レール際を逆下で殺しに行くと手玉が前へ流れる...2ポイント程度の離れた先玉がストロークによってはズレる...
ストロークと撞点によっては、タップの反発力が強いため、手玉がタップに蹴られて飛ぶ(ズレる)
タイミングとストロークによってはキューのしなり側に力がロスしている感覚があった。
ブリッジやグリップの位置、キューの振り抜き方や出し方で気になった部分はある程度解消出来たが、ストロークと球持ちの短長で玉質が変わるので先玉との距離も重要な要素になる。
万年最弱底辺B級が4時間程度撞いた感じでは正直すぐには「戦えない」ので、撞き込みが必要で自分の技術が広がる可能性を感じた。
また、使った感じ絶対カーボンシャフトの方がこのタップ扱い易いとも感じた。
シャフトの弾力のロスが無い分有効性は高い。
IGNITEにはかなりオススメしたい!
音はパッキン!パッキン!でヤバそうだけど(笑)
4.黒鬼の取付方法
めちゃくちゃ硬い黒鬼ですが、取付に特殊な工具や手順は必要ありません。
これは僕が取り付けた時の側面の削りカスですが、普通にカッターの刃でさくさく削れます。側面はこの時点でけっこう艶が出ています。
下は取付完了後の写真。側面はトコノールをつけて紙やすりの裏面で軽く磨いています。
なお、接着剤については牛王さんから1点コメントいただきました。「通常のタップと変わらないですが、特にボンドの吸込みが少ない為ゼリー状よりも液状の方がよりタップの性能を出せるかと思います。」とのことです。僕も液状のロックタイトミニを使いました。
ちなみに、取付後のシャフトをタイルに落とした音をTweetしたらけっこう反響がありましたので載せておきます。
音がかなり独特ですよね。
黒鬼をつけたノーマルシャフトをタイルに落とした音
最初聞いたとき、付け方間違ったのかと思った笑
これがイコール打音ってわけじゃないけど、おお!って思う人はいるはず😁 pic.twitter.com/9uvNsaXSMf
— ぬブロ (@nu_blo) September 27, 2022
取付に特殊なことはしないとは言え、牛革タップは豚革タップよりも取付時の注意点など気をつかう部分がありますので、自分で取り付ける際はこちらの記事を参考にしてください。
5.黒鬼のメンテナンス方法
牛革タップのメンテナンス方法は状況に応じてやり方が色々ありますので、こちらの記事を参考にしてください。
とは言え、他の牛革単層タップに比べると黒鬼ははるかにメンテナンスが楽です。そもそもほとんど変形しません。
下の写真は2時間撞いてきてそのままの状態、トータル7時間使用後です。
ちょっとだけ毛羽立ちはありますが、変形はほとんどしていません。取付後、ここまで一度も側面は削っていません。その必要がないんですね。
下の写真は、その後さらに1時間撞いて、トータル8時間経過後。側面に水もトコノールもつけず、紙やすりの裏面で軽く磨いてからRをちょっと整えただけです。
それで側面にこれだけの艶が戻ります。ほんとトコノールとか何も塗らなくて良いんじゃないですかね。僕は黒鬼にはもう何も塗っていないです。
6.黒鬼を試したいと思ったら
(1) リリース日
以下を予定しています。
プレリリース(1回目) | 2022年11月18日(金) |
プレリリース(2回目) | 2022年12月 |
本リリース | 2023年1月 |
プレリリースの段階ではパッケージなど間に合わない部分もあるようですが、品物は本リリースのものと変わらない完成品になります。
(2) 価格
発売から半年はプレリリース価格ということで税込み送料込みで2個¥3,000(振込手数料は購入者負担)
最低2個からの販売になります。追加の場合は1個¥1,500です。
半年後以降は少し値上がりする予定ですが、いまやタップも¥2,000超えが当たり前ですから、性能や寿命を考えるとこれは安すぎですね。
(3) 購入方法
購入したい場合はTwitterの販売用アカウントで受け付けます。
詳細は今後こちらからアナウンスされますので、興味がある人はこまめにチェックしてください。
大量生産できないため数に限りがあり、今回のプレリリースでは希望者全員に行きわたらない可能性もありますが、今後は予約販売なども検討するそうです。
また、プレリリースはTwitterでのみの受付になりますが、現在販売サイト準備中です。
開設後はこちらのサイトでも購入可能になる予定です。
なお、販売受付の予定等はありませんが、鬼Tipのインスタアカウントも開設されてます。
(4) プレリリース特典
数量限定ですが、11/18のプレリリース特典として青鬼のサンプルが付く予定です。当たった人は超ラッキーですね♪
7.まとめ
いかがでしたか。
今話題の鬼Tip、これからも青鬼、灰鬼とリリースが続きますので、まだまだ目が離せませんね。
好みのタップが見つからないという方、チャンスがあればぜひ一度試してみてくださいね。
今後もぬブロでは鬼Tipの動向に注目していきたいと思います。
以下、関連記事です。まだ読んでいない方はぜひあわせてご覧ください。