ビリヤードの道具や技術に関する見識が非常に深く、Twitter界隈で信頼の厚いバールアンドグレインカスタムキューズの中の人、BGさんが話題のKAMUIのSAI(砕)他、ブレイクタップレビューをしていましたので紹介します。
そこで紹介されている考え方はブレイクキューのタップ選びはもちろんのこと、プレイキューのタップ選びにも応用できます。
超有益ですので、ぜひ熟読してください。
この記事の内容 1.レビュー対象のブレイクタップ~カムイSAI、サムサラ、ゲイター 2.BGさんのブレイクタップレビュー 3.【プレーキューのタップ選びにも応用可】タップとシャフトとプレイヤーの相性で考える |
1.レビュー対象のブレイクタップ~カムイSAI、サムサラ、ゲイター
まずは、今回BGさんがレビューをしているブレイク用タップを紹介します。
(1) カムイSAI
まずは今話題のカムイSAI。気になっている人多いんじゃないでしょうか。
実際、この記事を書いている6/11現在、ニューアートでは品切れ中です。
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① カムイSAIのコンセプト
カムイSAIはコントロールブレイク用に作られたタップです。
今さら言うまでもないとは思いますが、昔はとにかく力強く割ることが重要だったブレイク、ラックシートの普及により、パワーだけでなく手球のコントロールも重要になってきていますね。
そういった変化に合わせて、ブレイクキューやブレイクタップも求められる性能が変わってきていますが、カムイSAIも例外ではなく、カムイの公式HPを見てみると、SAIは以下のような性能を追求して作られています。
・チョークのノリ
・グリップ力
・撞点の狭範囲を広く
・適度な高反発力
もっと簡単に表現すれば良いのにと思うんですが、3点目「撞点の狭範囲を広く」ってのはちょっと撞点を外しても、全然当たらないとか手球がどっかにすっ飛んでいくとかではなく、しっかりミートし手球も安定するってことですね。4点目「適度な高反発力」とは強すぎず弱すぎず、適度なパワーがあるってことです。さらにチョークのノリを良くし、グリップ力も高めることで、トビを減らし、スピン性能も良くしようという狙いがあると思います。
要するに、パワー一辺倒のカチカチのタップではなく、適度なパワーを備えつつ、ほどよい弾力で手球をしっかりと捉え、多少の撞点やストロークのミスもひろってくれ、手球のコントロールがしやすいタップなんだろうなということが想像できます。
② カムイSAIのスペック
そんなコンセプトを満たすべく開発されたカムイSAI、ニューアートのHPによると、スペックはこんな感じになっています。
材質 | 革+樹脂 |
構造 | 7枚積層 |
直径 | 約15mm |
厚さ | 約7.5mm |
DURO値 | 95.7 |
見ての通り、革と樹脂のハイブリッドです。
7枚の積層ってのは何枚かが樹脂で残りが革なのか、残りの革にも樹脂を浸透させているのか等、詳しいことはわかりませんが、革だけでもなく樹脂だけでもない、そんな構造です。
樹脂と革を融合させることで、一定の反発力とグリップ力を兼ね備え、パワーとコントロールのバランスをよくしたタップ、それがSAI、スペックから想像できるのはこんなところでしょうか。
(2) サムサラ トゥルータップ BJ
他の2つのタップはさらっと説明します。
次はカスタムキューメーカーのサムサラ製のブレイクジャンプタップ。これは昔からあるタップですが、良い評判は聞いたことありました。
出典:ニューアート
スペックはこんな感じ。
材質 | 仔牛革 |
構造 | 10枚積層 |
直径 | 14mm |
厚さ | 5.4mm |
DURO値 | 98.2 |
これは革製ですが、かなり圧縮してるからか、10枚積層で接着剤の比率が高いからか、DURO値は樹脂タップ並の数値です。
(3) ゲイター ジャンプ・ブレイクタップ
最後はゲイター。カスタムキューメーカーのギルバート製のブレイクジャンプタップです。これはTwitter界隈中心にとても評価の高いタップです。
今回レビューをしているBGさんのお店、バールアンドグレインカスタムキューズで取り扱っています。
こちらは上2つのようなスペック表はありませんが、樹脂と革のハイブリッドタップです。
樹脂を浸透させた豚革の積層で、樹脂と革の良いとこどり、そういう意味ではSAIと同じようなコンセプトで作られたものだと思います。
2.BGさんのブレイクタップレビュー
先日BGさんがこれらのタップのレビュー結果をTweetしていましたので、詳しくは以下をご覧ください。
詳細はFBにジャンプしますので、そちらのリンクを貼っておきます。
かなり長文で、1回読んでも理解できないかもしれませんが、理解できるまで熟読することをおすすめします。
皆さんが一番気になるのは、今話題のSAIだと思いますが、コントロールブレイク用とうたわれている通り、以下のような特質があるようですね。
・パワー抑えめ
・多少撞点をミスしても手球の動きが安定する
・カーボンより木のシャフト向き
・ジャンプキューには不向き
この3点目、「カーボンより木のシャフト向き」ってところが非常に興味深いところですので、このあと触れていきます。
2022/7/26追記
BGさんが、各種ブレイクタップの反発力(=硬さと言って良いかと)の比較をTweetしてましたので、載せておきます。
柔らかい順にSAIから始まって、G10が一番硬いです。
ブレイクタップの硬さ、反発力を私の中の基準で順位付けするとこんな感じですかね。
SAI > サムサラ > ソニック > ブレイクインパクト > タオム = サイボーグ> ラッシュ純正ハイブリッドレザー > ゲイター > ホワイトダイアモンド > キャンバスフェノリック(BI/トランス含)> エポキシ(ゼントー) > G10— BG(バール&グレインカスタムキューズ) (@burlgraincues) July 21, 2022
3.【プレーキューのタップ選びにも応用可】タップとシャフトとプレイヤーの相性で考える
今回のレビューで特筆すべきは、BGさんが同じタップを木とカーボン両方に付けて試しているところです。
プレイキューのタップを考える時、これまではカーボンシャフトには柔らかいタップが合うというのが定説だったように思います。
事実、市販のカーボンシャフトに標準装備されているのは柔らかめのタップばかりです。
しかし、カーボンは硬いですから、キュースピードが速い人の場合、硬いカーボンと手球に挟まれた柔らかいタップは大きく変形してしまい、うまく性能を発揮できないということがあるようです。逆にカーボンより柔らかい木のシャフトの場合、同じタップでもカーボンに付けた時ほど柔らかくは感じず変形もしにくくなる。これは物理的に考えても納得感のあることだと思います。
一方で、キュースピードがそこまで速くない人なら、カーボンシャフトに柔らかいタップを付けてもそこまで変形せず、タップの性能を損なうこともないのだと思いますし、逆にそういう人がカーボンシャフトに硬いタップを付けてしまうと、反発力が強すぎて、手球がぶっ飛んでいってしまい、コントロールが難しくなると思います。
BIZENや斬ブーストが使う人を選ぶというのはこういう点だと思います。
ちなみにBGさんは動画などを拝見する限り、キュースピードはかなり速いです。またキュースピードがトップレベルの湯山Pがイグナイトに斬タップで一番硬いブーストを付けているのは、上で書いたような理由によるものだと思います。
ですので、プレーキューのタップがいまいちしっくりこないなと思ったら、自分のキュースピード、シャフトの硬さとの組み合わせも考えてみると、悩みが解決するかもしれません。
ちなみに僕の場合、シャフトは木のノーマルシャフトですが、けっこう硬めのシャフトです。キュースピードは全く速くないのですが、ストロークは短めでスパンと撞くタイプなので、自分にはBIZENやカムイブラックHなど硬めのタップが合うと思っています。普段、近所の満喫で1人撞きしている時は、そういう硬めのタップは打感も好きですし、気持ちよく撞くことができ、好不調の波も少ないです。
しかし、コンディションが速い台やちびった時など、普段通りのストロークができず、とたんに大崩れをし、立て直せなくなることが多々あります。僕の場合、そういう時はもう少し柔らかめのタップを付けたスペアシャフトで撞いたほうが安定したりします。自分で立て直せれば良いのですが、ふだん撞く時間が少ないとそうもいかなかったりしますので、道具に助けてもらうというのも1つの選択肢かなと思います。
以上です。ブレイクキューでお悩みならぜひこちらの記事も参考にしてください。