豚革積層タップと比べるとメンテナンスに気をつかう牛革タップ。
なんでメンテナンスが必要なの?
どうやってやれば良いの?
そんな疑問を解決します。
今回の記事はこんな人におすすめです。
・牛革タップを使ってみたいけどメンテナンス方法がわからない人
・牛革タップを使ってみたけどいまいち良さがわからないと思った人
牛革タップの魅力を体験したいという人は、ぜひこちらの記事を参考にしてください。
牛革タップについて詳しくはこちらにまとめています。非常に奥が深い世界なので超長文ですが、まだ読んでいない方はぜひこちらを先にご覧ください。
この記事の内容 2.牛革タップのメンテナンス|最高の音と打感を引き出すために |
1.牛革タップはメンテナンスが大切な理由
品質が安定している豚革積層タップは特にメンテナンスをしなくてもその性能を発揮できますが、牛革タップ、なかでも一枚革タップは豚革積層タップに比べると個体差があり、安定するまでは変形しやすく、パンク(繊維がほつれてふわふわになる)などのトラブルが発生するリスクがあります。
それでは性能を発揮できず、牛革タップの良さを体験することはできません。
牛革タップの最大の魅力、それはやはり五感に訴えてくるような音と打感だと思います。これは接着剤や薬品などの不純物が多く混じっているタップでは真似できないものです。
手入れが楽で付けてすぐ使えるタップを選ぶ人が多い中、何かと手間がかかる牛革タップを愛してやまない人がいるのはこういった理由からなんですね。
しかし、牛革タップの魅力を最大限に引き出すためには、適切な手入れが必要です。
そういう牛革タップの特性をちゃんと理解していない人はけっこう多いんじゃないかと思います。僕もまだまだ半人前です。
そこを理解しないで牛革タップを使って、こんなの使えないと切り捨ててしまうのは本当にもったいないことです。ぜひこの記事を参考に牛革タップのメンテナンスをしてみてください。
ひとえにメンテナンスと言ってもやり方は人それぞれ、どれが正解と断言できるものはありませんが、どうせやるなら牛革タップに精通している人のやり方を参考にした方が安心ですよね。というわけで、今回の記事もモスモスさんのやり方を中心に、牛王さんにも一部ご意見をいただきましたので、以下に紹介していきます。
2.牛革タップのメンテナンス
状況に応じてやり方が変わりますので、それぞれ切り分けて説明します。
(1) 使用後に毎回行うメンテナンス
メンテナンスにそこまで気をつかわない豚革積層タップとは違い、牛革タップはその性能を維持し、長く使っていくためにも使用後に毎回メンテナンスが必要です。
これは2時間ちょっとプレーした後の僕の牛革タップです。
側面の艶がなくなり、わかりづらいですが多少毛羽立っています。そしてトップと側面のエッジもぼやけてしまっています。これを手入れする方法を説明します。
① 側面の手入れ
まずは側面から。側面の締めが甘いと側面がどんどん膨らんでしまいますので、側面を締めて固める必要があります。
使う道具
トコノール
タオル
紙やすりの裏面
やり方
トコノールを側面に塗ってから、余分をタオルで軽く拭き取り、紙やすりの裏面を使ってほんの少し熱が出るまで圧をかけて磨きます。
タップに圧をかけやすくするためにタオルで紙やすりをくるむのがポイントです。
モスモスさんに実演してもらいましたので、詳しくは動画をご覧ください。
これだけでびっくりするぐらい艶が出ます。
下の写真はモスモスさんのやり方を参考に自分でやってみた結果です。
これを毎回繰り返すことで、側面がだんだん硬くなっていき膨らみにくくなっていきます。
ちなみにモスモスさんはこの動画を撮らせてもらった時、この工程を2回繰り返していました。タップによっては艶が出にくいものがありますし、あまりメンテナンスされていなかったものだと、1回では足りない場合もあるようです。このへんは状態に応じてになると思います。
側面には何を塗るのが正解なのか?
ここではモスモス流、トコノールを使うやり方を紹介しましたが、何を塗るのが正解なのか?
色んな意見があるのですが、結論、何が正解とは言えないです。
人によって塗るものは様々で、トコノール、硬化剤、油性マジック、他にも色々ありますが、愛用している人もいれば、性能や寿命への悪影響を懸念する意見もあります。
歴が長い人の中には鼻の脂や唾液を塗っている人も多いと思いますが、不潔だからと嫌う人がいます。人体から出るものですから悪影響は無いようにも思うんですけどね。
じゃあ何が良いかなと考えてみたんですが、一番安心なのは「水」なんじゃないかなと僕は思っています。やったことがある人なら知っているとは思いますが、側面をごく少量の水で湿らせて、紙やすりの裏面で磨くだけでそれなりに艶が出ます。
牛革から離れますが、下の写真は水で湿らせて磨いただけの豚革積層タップ(斬ハイブリッドマックス)です。はっきり言ってこれで十分だと思います。ただしこれは豚革の場合です。
そもそも豚革は側面が膨らんだり、毛羽だったりとかはしづらいですからね。
ところが牛革タップの場合、水だけじゃ艶の出方が不十分で、側面を硬める効果もいまいちのように思います。っていうかいまいちでした。
本当は水だけで何とかしたかったんですが。。
下の写真は牛革タップの側面を磨いた後の写真、左が水だけ、右はトコノールで仕上げたものですが、艶はトコノールのほうが上です。
トコノールとはレザークラフトの必需品で、革の断面、裏面の仕上げに使います。トコノールには革の毛羽立ちを抑え、艶を出し、耐久性を上げるという効果があり、タップの側面仕上げにはうってつけのように思えます。
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牛王さんはトコノールではなくて蜜蝋(自作)や100均でも買えるアルコールインクを使ったりするそうですが、僕は以前から革小物作りでトコノールを使っていたので、牛革タップの側面仕上げにはトコノールを使おうと思います。豚革には使いませんが。
しかし、繰り返しやり過ぎると硬くなりすぎたりして、タップの性能を損ねる可能性があるのでは?と言われると何とも言えないので、必要最低限にとどめるのが安全かなとも思います。そのへんは各自の判断にお任せします。
② Rの手入れ
次にRの手入れです。順番として必ず側面→Rの順番で手入れしてください。
それはなぜかと言うと、下の写真はさっきの側面手入れ後のものですが、
見ての通り、側面を磨くとエッジの部分が少し丸くなってしまったり、はみ出たトコノールが付着したりしますので、側面の手入れの後にRの仕上げをする必要があります。
使う道具
ダイソーのかかとやすり
100均のネイルやすり
やり方
使うやすりは人それぞれですが、粗いやすりは使わないこと。繊維がほつれてパンクの原因になります。市販のタップシェーパーなどやすり面が金属になっているものはちょっと粗すぎるものがあるので注意が必要です。
モスモスさんはダイソーのかかとやすり→100均のネイルやすりの順で仕上げています。
紙やすりを使うなら、400番→600番が良いそうです。紙やすりは板とか固いものに貼って使うとやりやすいですね。
やっていることはタップ交換の時と同じですが、モスモスさんの実演動画も載せておきます。
ポイントはシャフトを回転させながら、やすりを下から斜め上方向にRの丸みをなぞるように動かし、Rを整形しつつ、エッジもまっすぐに整えていくこと。
このやり方でRの仕上げをすると、下の写真のようにエッジがまた復活します。
プレー後に毎回この手入れをします。これを面倒くさいと思うか、楽しいと思えるかが牛革タップを使えるかどうかの分かれ目かもしれませんね。
ずっと豚革メインで使ってきた僕ですが、今はこの時間がかなり好きです。
今日はどれぐらい毛羽立ってるかな、今日はいつもよりきれいにできたなとか笑
(2) ミスキューしたら?|チョークのノリが悪いと思ったら?
プレー中にミスキューした後の手入れと、チョークのノリが悪いなと思った時の手入れは同じです。以下を参考にしてください。
使う道具
各種タップシェイパー
やり方
タップを削っちゃだめです。
タップシェーパーをタップの上に置いて押し付けながらシャフトを回転させ、タップの表面にゴルフボールのようなディンプル(くぼみ)を作ります。これでまたチョークが乗るようになって、ミスキューもしにくくなります。
よくミスキューするたびにガリガリ削ってる人がいますが、タップがどんどん薄くなって寿命が縮むのでやめましょう。
(3) 側面が毛羽だってきたら?
繊維が粗い牛革タップは取り付け直後はもちろんのこと、安定してからも側面が毛羽だってきます。僕の場合、引き球の練習をした後なんか特にですね。
下の写真、矢印のところにぴょんと寝ぐせみたいに繊維が1本飛び出していますが、こうなった時の対処法は以下の通り。
使う道具
トコノール
タオル
紙やすりの裏面
やり方
トコノールを塗って、紙やすりの裏面で磨きます。上で説明した側面の手入れと同じやり方と同じです。
ちなみに牛王さんは上の写真ぐらい繊維が飛び出てきたらライターの火で炙っちゃうそうですが、それは先角溶けそうで怖いので僕には無理です。。ライター持ってないし笑
(4) 側面が膨らんできたら?
牛革タップは安定するまでは側面が膨らみやすいですが、タップは削れば削るほどスカスカになって強度が落ちていきます。長持ちさせるためには、膨らんだからと言って安易に削らない、そのへんを意識して手入れする必要があります。
下の写真、先日モスモスさんに付けてもらった超貴重な100年前のタップ(モナーク)です。
左がプレー前、右が45分ぐらい優しいショットで撞き締めた状態。
このタップは取り付けからまだ30球ぐらいしか撞いていない状態でしたが、まだ安定していないため、45分撞いただけでこれだけ変形します。側面が膨らみ、Rも潰れているのがわかります。
こうなった時の側面の手入れ方法を紹介します。
① まずは膨らんだ側面を押し戻す
使う道具
アルミなどの金属板
やり方
使うのはアルミなどの金属板、これをタップの側面に押し当てて、膨らんだ側面をぐりぐりと渾身の力で押し込みます。
全部は元に戻らないかもしれませんが、柔らかいタップや付けたばかりのタップはこれでかなり元に戻ると思います。
僕もこの方法でやってみたのですが、下の写真がビフォーアフターです。アフター(右)はRもちょっといじってますが、側面の膨らみが戻っていると思います。
このタップは取り付けて間もないし、柔らかめなので、これだけでほぼ戻りましたね。
金属板の入手方法
僕はモスモスさんが使っているのと同じ23×23mm、厚さ5mmのアルミ板を買いました。
買ったのはここ。
アルミにも色々種類があって、用途に応じて使い分けとかあるようですが、僕が買ったのは最も一般的っぽかったA5052というタイプのもの。
1枚200円と安いのは良いのですが、こんな小さくても送料が1,170円。。
案の定、厳重に段ボールに梱包されて送られてきましたよ。まあ、こういうのは仕方ないですよね。。
某ショップでタップ買うと、でかい段ボールにタップ1個入れて送られてくるって聞いたことあるんで、免疫があります笑
このままだと角張り過ぎててバリもあって、手が痛いし先角も傷つけちゃうので、ダイソーのダイヤモンドやすりで面取りしました。
このアルミ板はモスモスさんのおすすめサイズですし、これはこれでとても使い勝手は良いのですが、ぬブロ的にはもっと安くてそこらへんで手に入れるもので代用したい。
というわけで見つけましたよ!
セリアのマグネット用取り付けパネル。
サイズは30×30mm、厚み0.8mmで裏にはクッションが付いたシールが貼ってあるんですが、剥がさなくてもこのまま使えます。面取りの必要もありません。
モスモスさんにも使ってもらいましたが、薄くてもたわむことはなく、十分使えるとのことでした。ステンレス鋼板製なんでしっかりしてるんですね。
アルミ板を買うのが面倒ならこれを使ってみてください。でも厚みがあるほうが力を入れやすいしやりやすいです。裏面にゴムとか貼って厚みを出すともっと使いやすくなるかと思います。
② 押し戻せなかった側面は削る
ゴリゴリやっても押し戻せなかった場合は、紙やすりで削ります。モスモスさんは240番、400番、800番の順番に番手を上げていって仕上げています。
使う道具
紙やすり(240番、400番、800番)
トコノール
紙やすりの裏面
やり方
モスモスさんも牛王さんも刃物は極力使いません。理由は刃物を使うとタップに負荷がかかるから、それとほんの少しだけ削るという微調整が難しいからです。でも膨らみが大きいタップはモスモスさんもさすがに刃物で削ってました。
紙やすりで削った後は上で説明した側面の手入れと同じ、トコノールを塗ってから、紙やすりの裏面で仕上げます。
ちなみに牛王さんはプレー後に側面が膨らんでいてもすぐには手入れせず、半日ぐらいおいてから手入れをするそうです。それは膨らんだ革が自分で復元するのを待つためです。弾力が残っている状態の革なら、使用後すぐは膨らんでいても、時間をおけばほんのわずかでも自力で復元する可能性は否定できないですよね。削った後に革が自分で戻ってしまうと、その部分がえぐれたようになってしまうので、半日ぐらい待つそうです。
(5) Rが変形したら?
付けたての牛革タップは、Rが潰れて平たくなったり、撞いたところがそのままボコってへこんだり、けっこう大きく変形します。柔らかめの単層タップだと特に。
上の写真を再掲。側面だけでなく、Rもこれぐらい普通に変形します。
そうなった時のメンテナンスは以下の通りです。
使う道具
各種タップシェイパー
ダイソーのかかとやすり
100均のネイルやすり
やり方
上で説明したRの手入れと同じやり方ですが、変形が大きい時やRをきつくしたい時は、かかとやすりだと目が細かくて時間がかかるので、市販のタップシェーパーなど使うと良いと思います。
ただし粗いやすりを使う時は、やすりは下から上ではなく、上から下に動かすようにしましょう。
下から上に粗いやすりを動かしてしまうと、パンクの原因になります。
(6) タップが硬くなったら?
硬くなって弾力がなくなってしまったら交換したほうが良いと言われるタップ、もしかして柔らかくする方法があるのかなと思って聞いてみましたが、やはり交換が良いそうです。
革の柔軟剤というものがあり、それを試してみた人もいるそうなのですが、たんにコシがなくなっただけで、全く使えなかったそうです。
なお、硬くなったなと感じたら、いつものRよりも平らになっているのが原因である可能性もあるので、Rもチェックしてみてください。
(7) パンクしたら?
パンク(繊維がほつれてふわふわになること)した場合の対処法も聞いてみましたが、こちらもやはり交換が良いそうです。
ブルータップの場合は取り付け後に多少ふわふわしていても、撞き締めることでそのまま使用できるものもあるそうですが、そこの判断は素人には難しいと思うので、交換してしまったほうが良いと思います。
3.牛革タップのタップ交換
ここまで日常的なメンテナンスを紹介しましたが、牛革タップも寿命がきたらタップ交換が必要です。
(1) 牛革タップの替え時は?
先日こちらの記事でも書いた通り、モスモスさんも牛王さんも牛革タップは豚革タップより寿命が長いと言っていますが、牛革タップの替え時はどれぐらいなんでしょうか。
これは好みによっても違いますし種類や銘柄によっても違うので、何か月で交換と一概に言うことはできませんが、目安として以下のような状態になったら交換したほうが良いと思います。
・硬くなって弾力がなくなったら
・メンテしてもチョークが乗りづらくなったら
・メンテしてもミスキューが減らなかったら
・パンクしたら
ちなみに、2~3か月で交換する人が多い豚革積層タップ(参考記事)ですが、付けてから1年以上使っているという牛革タップの話はよく聞きます。先日のBDさんのこちらの記事では、30年以上前に付けた牛革タップが現役というエピソードも紹介されていましたね。
ただしそれだけ長く使えるようにするには、上で紹介したようにしっかりと手入れをすることが必須です。
(2) 牛革タップのタップ交換方法
どうにもならなければ替えるしかないわけですが、色んなところで紹介しているこちらの記事、Twitter界のタップマイスター、モスモスさんのタップ交換方法をぜひ参考にしてください。
4.まとめ
いかがでしたか。
牛革タップって思っていた以上にメンテナンスに気をつかいます。
ちゃんとしたメンテナンスをせずに使ってもその良さがわからないばかりか、全然使えないと思って二度と使わなくなったという人もいるかもしれません。
それはとてももったいないことですので、この記事で紹介したメンテナンスを行いながら、ぜひもう一度牛革タップを使ってみてください。
今回の記事は以上です。
以下関連記事ですので、こちらもあわせてご覧ください。