タップ交換の時に座を付けたい、外したいって思ってもやり方わからなくないですか?
動画つきで詳しく解説します。
この記事の内容 2.タップ交換|座の付け方 3.タップ交換|座の外し方 |
1.座は付けたほうがいいの?
タップ交換で先角の水平出しやタップの側面削りをする時に、先角を傷つけてしまうことがありますが、座があれば回避できるケースがありますので、先角保護のために座は付けたほうが良いと思います。
ただ人によっては打感やフィーリングが変わることを嫌って座を付けない人もいます。
座には他にも役割や付けることによる効果があるんですが、そのへんについて詳しくは、「ビリヤードタップの座とは【役割は?つけると何が変わるの?】」の記事にまとめていますので、興味のある人は読んでみてください。
2.タップ交換|座の付け方
座の材質としてポピュラーなのはファイバー、ポリカーボネート、革ですが、革の座は革タップと同様に取り付けできるので、ここではファイバーとポリカーボネートの座にしぼって説明します。
基本的には先日「ビリヤードのタップ交換【失敗しない手順まとめました】動画あり」の記事で公開したタップ交換の手順とほぼ変わりません。
(1) ファイバーの座の取り付け
今回つけるのはこの赤い座です。
先角の水平出しまでは終わっている状態から説明します。
まずは動画をご覧ください。
動画の中でも解説していますが、工程ごとのポイントを以下に解説します。
① 座の水平出し
所要時間:5分
使う道具:カッターの刃
特に難しいことはなく、この下の画像のようにカッターの刃を座に垂直にあてて、刃を前後に動かして削ります。このとき刃が座から離れないように注意してください。
全体をまんべんなく削るため、10往復削ったら座を90度回転させてまた10往復というのを繰り返しながら削っていきます。
途中経過。まだ表面に凹凸があるのがわかりますね。さらに削っていきます。
水平出しが完了した写真がこちらです。
本当は表面を完全にツルツルにするのが理想なんですが、限界があるのでこれぐらいで良しとします。まだ少し凹凸が残っていますね。
② 座と先角の接着
所要時間:10分(硬化待ち時間含む)
使う道具:瞬間接着剤(ロックタイトミニ)、指サック、養生テープ、布
ここはタップと先角の接着と同じ方法でやっていきます。タップ交換をやり慣れている人は、ここは飛ばして次の座の側面削りから読んでください。
②-1 準備
まず以下の準備をします。
2022/6/19 追記 ここでは指サックを使って中心位置を確認しながら接着する方法を紹介していますが、もっと確実にタップを中心位置に接着する方法をこちらの記事にまとめました。ぜひ参考にしてください。 |
・先角を養生テープで養生する。
・布で先角と座の接着面を拭いて、ほこりや手の脂などの汚れを落とす。
・両手の親指、人差し指に指サックを装着する。
僕は接着工程に指サックを使います。それは指で前後左右の位置を確認しながら、ジャストの位置に固定する時に指に接着剤がつかないようにするためです。
タップ交換に慣れている人は、自分のやり方でやってください。
②-2 接着剤を先角に塗布
まずは先角に接着剤を1,2滴たらします。
②-3 座の取り付け
指で前後左右の位置を確認しながら、中心位置に取り付けます。接着剤が手につきますが、指サックをしているので大丈夫です。
②-4 圧着
座を固定できたら、指で強く押さえたり、下の画像のように床に押し付けたりして圧着し、塗り過ぎた接着剤を押し出して、接着を確実にしていきます。
あとは養生テープを剥がして、先角と座の汚れを布で軽く拭き取れば、接着は完了です。
③ 座の側面削り
所要時間:15~20分
使う道具:カッターの刃(鋭黒 片刃)、薄い紙
ここは先日「ビリヤードのタップ交換【失敗しない手順まとめました】動画あり」の記事で公開したタップ側面削りの手順とほぼ変わりません。
できれば上の記事を先に読んでおいてほしいのですが、読んでいない人のために細かく解説します。
使うのは「鋭黒 片刃」というカッターの刃です。これを使わないと今回の手順は再現できません。
片刃とは|タップ交換に片刃を使うメリット 他の記事でも載せましたが、 刃物には両刃と片刃があります。両刃と片刃の形状は下の絵のようになっていて、片刃の刃は裏面が先端まで真っ平です。 タップの側面削りを両刃と片刃でやる場合の違いは下の絵を見てください。 |
片刃を使った側面削りのイメージがわきましたか?
片刃なら刃の角度の微調整は不要です。カッターの刃の面を先角に密着させたら、あとはシャフトをくるくる回しながら削るだけです。
動画の中でも解説していますが、以下にあらためて順を追って解説します。
③-1 座の側面削り|序盤
まずはカッターの刃は座に対してほぼ水平にして、座の下側を細く削っていきます。
ポイント 以下に注意してください。 ・力まかせに削らない 力まかせに削ると接着面に負荷がかかり、座がはがれてしまう可能性があります。また、無理にごりごり削ると刃が暴れて側面がガタガタになったり、先角まで削ってしまうおそれがあります。 自分が旋盤になったようなイメージで、力を抜いて、刃は動かさずにシャフトだけくるくる回していきます。 この時、刃の面は先角から離れないようにしてください。上でも説明した通り、片刃を使えばシャフトに刃をぴたっと沿わせて削れば、座と先角の側面のラインは自動的にフラットになります。 |
徐々に上側に移動しながら削っていくと、だんだん刃に伝わる抵抗が大きくなってきます。
そうなってきたら次の段階に進みます。
③-2 座の側面削り|中盤
抵抗が大きくなってきたら、カッターと先角の間に紙をはさむことで、その分座を薄くスライスできるようになるので、力を入れなくても削れるようになります。
ちなみに僕が使っているこの紙はハガキよりちょっと薄いぐらいの紙ですが、それでもうまく刃が入らない場合は、もう少し厚めの紙を使うと軽い力で削れるようになります。
何周か削ると、刃が空振りするようになってくるので、そしたらまた紙を外して、上に向けて少しずつ削り上げていきます。
途中経過。削りかすは糸のように細いですね。残すは座の上側です。
これを繰り返しながら、どんどん上に向かって削り上げていくんですね。
③-3 タップの側面削り|終盤
座の上側を削る時は、刃の角度を下の画像ぐらいまで上げて削っていきます。
この時、先角まで削ってしまわないように必ず紙をはさみましょう。
刃が空振りするようになってきたら、また紙を外して、最初と同じ要領で削っていきます。
途中経過。だいぶフラットになってきましたね。
③-4 座の側面削り|仕上げ
上の写真ぐらいまでフラットになってくると、シャフトをくるくる回しても空振りばかりで削れなくなってきます。
そしたらカッターの刃を先角にピタッと密着させて、下から上にかんなをかけるような感じでしゃっしゃっと削っていきます。
繰り返しますが、このやり方ができるのは片刃の刃を使っているからです。両刃の刃ではこんなやり方はできません。
この時、絶対に力を入れないでください。座がはがれるおそれがあります。ときどき座に刃がひっかかって止まることがあると思いますが、その時は無理やり削ろうとせず、シャフトをゆっくり回しながらひっかかった部分を削り落とします。
刃を動かしても空振りするばかりで、ほとんど削れなくなってきたら、少しずつカッターを持つ手に力を入れていきます。
削っていくうちに、座の周りの部分が上側にささくれだってきたら、先角の水平出しと同じ要領で刃を垂直にあててシャフトを回し、ささくれを削り落としていきます。
この時、常に刃を先角に密着させてください。
これを繰り返して形を整えれば、座の側面削りは終わり、座の取り付けも完了です。
もちろん座と先角の境目はフラット、先角は一切傷つけていません。
先角を傷つけないよう丁寧にやる分、時間もかかりますが、座は一度付けてしまえば当面は交換の必要はありませんから、この時間は惜しまないでください。
あとは普通のタップ交換同様、座のもう片面の水平出し、タップの接着、側面削り、アール出し、側面磨きをやれば、タップの取り付けも完了です。
きれいに取り付けられましたね。
(2) ポリカーボネートの座の取り付け
次にポリカーボネートの座の取り付け方法を解説します。
今回取り付ける座は、先日「ポリカーボネートの座を自作【1枚4円】」の記事で自作したこちらです。
ファイバーの座とは違い、こちらは水平出しは不要なぐらい表面はツルツルなので、そのまま接着していきます。
基本的な付け方はファイバーの座とだいたい同じです。
まずは動画をご覧ください。
動画の中でも解説していますが、工程ごとのポイントを以下に解説します。
① 座と先角の接着
ここはファイバーの座の接着と全く同じなので割愛します。
② 座の側面の粗削り
所要時間:5分
使う道具:ダイヤモンドやすり、養生テープ
ポリカーボネートはファイバーよりも固いため、あとの工程を楽にするため、カッターの刃で本削りをする前にダイヤモンドやすりで粗削りをしていきます。
ここは厳密にやる必要はないので、やすりが養生テープの表面を少し削るようになってきたなあと思うぐらいまで削ったら次の工程に移ります。
③ 座の側面の本削り
所要時間:15~20分
使う道具:カッターの刃(鋭黒 片刃)、薄い紙
この工程はファイバーの座の側面削りと変わらないので割愛します。
思っていたよりもポリカーボネートって柔らかいんですね。こんなにすんなり削れるとは思いませんでした。
側面削りが終わった状態。ファイバー同様、削りかすは糸のように細いです。
ここから普通のタップ交換の手順でタップを取り付けますが、ポリカーボネートの座の取り付けにはこのあとまだ続きがあります。
④ 座の側面磨き
所要時間:5~10分
使う道具:紙やすり(800番、1500番)
上の写真、よく見るとわかるんですが、座の表面に刃で削った痕が残っていて、見た目も透明度もいまいちです。
そこで紙やすりを使ってタップと座を一緒に磨いていきます。
まずは800番の紙やすりで、下の画像のようにやすり面を外側にして折りたたんだ紙やすりを親指、人差し指、中指で挟むようにもって、そこにタップを入れて、シャフトをくるくる回して磨いていきます。20周ぐらい磨けば良いと思います。
800番の次は1500番の紙やすりで同じように20周ぐらい磨いていきます。
ポイント この工程、慣れないと先角まで削ってしまうおそれがありますので、持ち方を工夫します。 紙やすりを外すと下の画像のような指の形になっていますが、こうすれば人差し指がストッパーになり、紙やすりが先角まで届かないようにすることができます。ただそれでも先角までやすりがあたってしまう危険性はあるので、慎重にゆっくり回しましょう。 |
次にやすり面を内側に折り返して、やすりの裏面の紙の部分で圧をかけながら磨いていきます。僕はトコノールという革の仕上げ剤を塗っていますが、それはタップの側面を磨くためで、座を磨くためではありません。
磨き終わった状態。表面の傷はなくなり、透明度も増しました。徹底的に透明感を出したい人は、この工程を繰り返してください。
最後にタップの天面に付着したトコノールをやすりで軽く削り落とします。
これでポリカーボネートの座の取り付けは完了です。上出来ですよね!
これならKAMUIクリアの取り付けも自分でできそうですね。
そのうち記事にしようと思います。
3.タップ交換|座の外し方
次に座の外し方です。
そもそも座は一度取り付けたら、よほどのことがないと外す必要なんてないと思うんですが、取り付けた座の打感が気に入らないとか、別の素材を試したいという時に取り外さないといけないですよね。
あとKAMUIクリアなんかは最初からタップに座が着いちゃってますから、KAMUIクリアを交換する時は、座ごと一緒に交換しないといけないです。なんかいいんだか悪いんだか、、、
でも座の外し方ってわからない人もいると思います。ということでこれから解説します。
(1) ファイバーの座の取り外し
まずは動画をご覧ください。
動画の中でも解説していますが、工程ごとのポイントを以下に解説します。
① 座の切り落とし
所要時間:5分
使う道具:カッター、金づち、ダブルクリップ、厚手の布
カッターの刃と金づちを使って切り落とすのですが、手元が狂ったり刃がずれたりすると先角を傷つけてしまうため、念入りに養生します。
下の画像のように先角にフェルトなどの厚手の布を巻いたら、その上からダブルクリップをはさんで、切り落とすギリギリのラインが見えるような位置で固定します。慣れてきたらここまでしなくても良いとは思いますけどね。
次に切り落とす位置に刃をあてたら、刃の背を金づちで叩いて切り落とします。
ファイバーの座は柔らかいので、そんなに力を入れなくても切り落とせます。
② 残った座を削る
所要時間:10~15分
使う道具:カッター
今回、思っていたよりも座が先角に残ってしまいましたが、残りはカッターの刃で薄くスライスしながら削っていきます。
先角の水平出しと同じ要領です。
下の画像くらいまで削り終わったら、次の工程に進みます。
③ 先角の水平出し
所要時間:5分
使う道具:カッター
ここも先角の水平出しと同じ要領で、刃を先角に垂直にあてて、シャフトを回しながら削っていきます。
最後に水平出しがちゃんとできているかチェックします。刃の背のほうを同じように先角に垂直にあてて、シャフトを回転させて、刃と先角の間にすき間がないか確認しましょう。
これでファイバーの座の取り外しは完了です。
(2) ポリカーボネートの座の取り外し
やり方はファイバーの座の取り外しと同じです。
実際に取り外した動画を載せておきますが、解説は割愛します。
ポリカーボネートはもっと固いと思っていたんですが、意外にも同じやり方でいけました。
というかファイバーの座よりも簡単で、最初の段階でこんなにきれいに切り落とせました。
写真の右側、座に刃を入れた箇所が少しかけていますが、そこにくさびのように入り込んで接着面をスパッと切り落とせています。
これがたまたまなのか、データが少なくてよくわからないんですが、ポリカーボネートのほうがファイバーよりも固いので、こういう外れ方になるのかもしれないですね。
もし座が先角に残ってしまうようなら、ファイバーの座と同じやり方で削り落としてください。
4.座の取り付け、取り外しは自分には無理と思ったら
ここまで読んで、「やっぱりちゃんとしたところに頼もう」って思った方に別の選択肢を2つ用意しましたので、参考にしてください。
(1) 工房に頼む
タップ交換だけでも難しいのに、座の取り付けとか取り外しなんて自分には無理って思う人も多いと思います。
そういう人は工房に頼むことになると思いますが、革のタップ交換とはやり方が違う部分もあるので、ちゃんとした旋盤があるところに頼んだほうが無難だと思います。
タップ交換をしてくれる店については、「ビリヤードのタップ交換をしてくれる店23選【店選びのポイントも】」の記事にまとめましたので、こちらを参考にしてください。
(2) 簡易旋盤を買う
頻繁にタップ交換をする人は、タップ交換などの簡単なキューメンテナンスができる簡易旋盤を買うのもありだと思います。
若井製作所という会社が「デザイヤ」という簡易旋盤を販売しています。
オプションの有無で価格は変わりますが、¥23,500 – ¥33,700で購入可能です。
これなら樹脂タップの交換もできますし、何でも自分でやってみたいという人なら選択肢としてありだと思います。
5.まとめ
いかがでしたか?
座の取り付けや取り外しの方法をちゃんと説明しているサイトが無かったので今回の記事をまとめました。参考になれば幸いです。
なお、ここで紹介した接着、側面削り、水平出しなどの工程については、こちらの記事↓で失敗しないポイントを細かく解説しています。こちらもあわせて読めば、コツがわかると思うので、座の取り付け、取り外しも上手にできるようになると思いますよ。再現性はかなり高いです。
以上です。
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