樹脂タップを交換したいんだけどどうやって外したらいいの?
専用の機械を使わずにきれいに取り付けできるの?
樹脂タップ交換のやり方がどこ調べても見つからないんだけど。
→そんな悩みを解決します。
旋盤を使わずに樹脂タップを交換する方法を公開します。
樹脂タップの取り外し~取り付けまで全て手作業で可能です。
この記事の内容 1.樹脂タップ交換 |
ビリヤードとモノづくりが好きであれこれ自分でやっています。
でも専門知識も工具もないんで、創意工夫だけで色々と実現しています。
そんな僕がたどりついた樹脂タップの交換方法を公開します。
ちなみに僕の樹脂タップ交換経験はたぶん4本、今回が5本目です。たったそれだけです。
そして前回やったのがたしか1年半以上前です。
そんな僕でもこれから紹介する方法で樹脂タップ交換をやって、手作業だけでここまでの仕上がりを実現できました。
この記事を書くにあたって、さすがに久しぶりで不安だったので練習用に樹脂タップを2つ買いましたが、1発OKの出来だったので結局使わずじまいです。
ちなみに僕はこの方法で樹脂タップを交換したブレイクキューやジャンプキューを2年近く使っていますが、今まで一度もタップが飛んだことはありません。
それでは前置きが長くなりましたが、樹脂タップ交換方法を説明します。
2021年4月16日追記
ブレイクキュー、ジャンプキューのタップに最適と評価が高まっているエボナイトという合成樹脂のタップ交換方法をこちらの記事↓にまとめました。こちらは動画もまじえて解説していますので、よかったらあわせてご覧ください。
1.樹脂タップ交換
(1) 樹脂タップ交換に使う道具
樹脂タップ交換に使う道具はこちらです。すべて100均に売ってます。
・金づち(※)
・糸のこ(※)
・木工やすり(※)
・カッター
・ダイヤモンドやすり
・紙やすり(1500番~2000番)
・セロテープ
・ダブルクリップ(縦2cm×横3.2cmぐらいのもの)
・厚手の布(フェルト等)
・指サック
・接着剤(ロックタイト)
ダブルクリップとか指サックとか、意味がわからないものがいくつか登場しますが、後で説明しますw
ちなみに※をつけた金づち、糸のこ、木工やすりは樹脂タップの取り外しに使うのですが、3つすべて必要なのではなく、樹脂タップを外す方法によって使う道具が異なります。この後で説明します。
(2) 樹脂タップ交換の方法
今回樹脂タップを交換するのはこいつです。
MEZZのソニックタップです。先角と同じ色なのでわかりづらいんですが、ソニックタップに付属する白い座も入っています。
これもだいぶ前に自分で取り付けたものです。
① 樹脂タップの取り外し
取り外し方には以下の3つの方法があります。
・カッターと金づちで叩き切る
・糸のこで切る
・木工やすりで削る
1つずつ解説します。作業が楽な順に記載していますので、上から順に試してみてください。
①-1 カッターと金づちで叩き切る
これが一番楽なのですが、この方法が使えるのは以下の場合に限ります。
・ファイバーやポリカーボネートなどの座を入れていて、その座も一緒に切り落とす場合
・ソニックタップを座と一緒に交換する場合
・めちゃくちゃ切れる革包丁がある場合
2020.11.10追記 最近、写真と文章だけで説明するのに限界を感じ、ユーチューブを始めたんですが、今日公開したこちらの動画で、ファイバーの座とポリカーボネートの座をカッターと金づちで切り落とす動画をアップしました。 付けてるのは革タップですが、座ごと切り落とすのは同じなので、良かったら見てみてください。
|
まずはやり方を説明すると、先角とタップの間にカッターの刃を当てて、くさびのように金づちで叩いて切り落とすんです。
ただ、手元が狂ってカッターの刃の位置がずれると先角に大ダメージを与えてしまうので、しっかり養生します。
普通、先角の養生というとテープを巻くんですが、テープなんかでは防御力が全く足りないので、こうやります。
先角にフェルトなど厚手の布を巻いて、ダブルクリップで挟みます。
この時、切り落としたいラインがギリギリ見えるか見えないかぐらいの場所で固定します。今回僕は座も外そうと思っているので、座も見えるように固定しています。
ちょっと余談なんですが、「ビリヤードタップの座とは【役割は?つけると何が変わるの?】」でも書いた通り、座を入れちゃうとパワーが落ちる場合があるんですよね。特にソニックタップの座は柔らかめなので、パワーが落ちる気がします。メーカーが座とセットで売ってるので、それがベストなセッティングなのかもしれませんけどね。
話を戻しますが、養生した後、こうやって↓カッターの刃をあてたら、刃の背の部分を金づちで叩きます。
ポイント 力を込めて一気に叩き切ろうとすると、シャフトにダメージを与えてしまう恐れがあるので、コンコンと優しく少しずつ切り落としていきます。 |
ソニックタップ付属のファイバーの座はたいして力を入れなくても簡単に切り落とせました。想像以上に軟らかいですね。
上の写真は先角に傷がついているように見えるかもしれませんが、傷がついているのは白い座です。先角にはダメージありません。
硬い素材のタップだとこの方法は難しい
カッターではなく、よく切れる革包丁なんかだと硬めの樹脂でも何とかなりそうですが、G10なんかは硬すぎるのでやめたほうがいいです。革包丁が刃こぼれしそうですし、そもそもあまり強い力で叩いたらシャフトにダメージを与えてしまいます。
あまり無理しないようにしましょう。
この方法で切り落とせた人
→ 「② 先角の水平出し」へ
この方法は無理だった人、やめとこうと思った人
→ 「①-2 糸のこで切る」へ
①-2 糸のこで切る
樹脂タップの素材にも色々種類はあると思いますが、たいていのものは糸のこで切れるはずです。
僕は普段、樹脂用ののこぎりを使うんですが、普通そんなの持ってないと思うんで、100均で買える糸のこを使いましょう。
この場合も上と同じ要領でダブルクリップで養生し、それに沿って刃を動かしていけば、先角を傷つけずにカットできます。
糸のこで切り落としても、先角にタップがまだ残っていると思いますが、この先は次の工程できれいにしていきます。
この方法で切り落とせた人
→ 「② 先角の水平出し」へ
糸のこは何か怖いなと思った人
→ 「①-3 木工やすりで削る」へ
①-3 木工やすりで削る
このやり方が一番大変ですが確実です。
最初からひたすらやすりで削っていきます。
最初は木工やすりで粗削りしていきますが、ある程度まで削れたら、目の細かいダイヤモンドやすりに切り替えます。
粗めのやすりで削りすぎると先角にダメージを与える危険性がありますからね。
先角がそろそろ見えそうだなというところまでまで削り終えたら、次の工程に進みます。
② 先角の水平出し
この工程は革のタップ交換と同じです。僕はカッターの刃で水平出しをします。
上の写真のように先角に対して垂直にカッターの刃を立てて、シャフトをくるくる回しながら、タップの削りかすを落としていきます。
樹脂タップの素材によってはカッターでは歯が立たないものもあるかもしれませんが、その場合はダイヤモンドやすりで削りましょう。
こうやって先角とやすりの面がぴったり密着するように持って、先角をくるくる回しながら慎重に削っていきます。
これで先角の水平出しは完了です。
③ 樹脂タップの水平出し
今回取り付けるのはこのG10タップです。以前、ジノフェラーリのジャンプキューに標準装備されてるタップが、たいして使ってもないのに吹っ飛んだんです。どんな仕事してるんだよって感じですね。そのまま保管していたので再利用します。
別にG10が好きでも何でもなく、むしろ手球を傷つけたりするらしいので使う気はないのですが、革包丁でも歯が立たない硬さのG10タップでも取り付けできるということを証明したかったので、あえてG10を取り付けていきます。
水平出しのやり方は革のタップとたいして変わりませんが、僕はダイヤモンドやすりの上でタップを前後に動かして、接着面がツルツルになるまで削ります。
これぐらい↓でOKです。これで樹脂タップの水平出しも完了です。
樹脂タップって接着面をツルツルにしないほうがいいんじゃないの?
僕は表面をツルツルに磨きますが、ツルツルにはせずに表面を荒らしたほうが強固に接着できると書いてあるサイトがあります。
ただ僕はこのやり方でこれまでファイバーの座、ポリカーボネートの座、ソニックタップ、G10タップなど色々と付け替えて使ってきましたが、一度もタップが飛んだことはないので、問題はないと思っています。
ただもしもこの方法でタップが飛ぶようなら、表面を荒らして接着する方法を試してみてください。僕はそのやり方でやったことはないんですが。
④ 樹脂タップの接着
④-1 樹脂タップ取り付けに使う接着剤
ここまでで先角と樹脂タップの水平出しができましたので、いよいよ接着していきますが、僕が使う接着剤はこれです。
僕は樹脂タップも革タップもすべてこのLOCTITE(ロックタイト)を使います。
樹脂タップの接着にはゼリー状が良いとか2液性が良いとか書いてあるサイトもありますが、僕はロックタイトで不具合が起きたことはありません。
ちなみにこのロックタイト、100均ならどこでも売っているわけではなく、キャンドゥにしかありません。あとうちの近所のSEIYUには売っていました。
なお、タップ交換に使う接着剤について「ビリヤードタップ交換におすすめの接着剤はこれ!」の記事で詳しくまとめていますので、接着剤について色々と気になっている人はぜひ読んでください。
④-2 ロックタイトでの樹脂タップの接着方法
普通、タップを接着する時って一旦タップを付けてから、位置を微調整すると思いますが、このロックタイトは微調整している間にガチガチに固まって二度と動かなくなります。
僕は以前、他の接着剤と同じ感覚でロックタイトで接着して変な位置で固まってしまい、タップを1個無駄にしたことがあります。
それ以来僕はちょっと変わった方法で接着をします。
まずは先角にセロテープを貼って接着剤がはみ出てもいいように養生します。
先端ギリギリに合わせて貼りましょう。
先角とタップの接着面に手の脂やごみがついていると接着が甘くなる可能性があるので、ティッシュなどでよく拭いておきましょう。
2022/6/19 追記 ここでは指サックを使って中心位置を確認しながら接着する方法を紹介していますが、もっと確実にタップを中心位置に接着する方法をこちらの記事にまとめました。ぜひ参考にしてください。 |
次に指サックを左右の親指、人差し指に装着します。
そして先角に接着剤を塗ったら、指で前後左右の中心位置を確認して樹脂タップをジャストの位置に一発で固定します。
指で触ればジャストの位置がわかりますよね?
でも直接指で触っちゃうと接着剤が手に付くのが怖くてずれてしまいがちなので、指サックをつけます。
これなら接着剤が手につくことなんか気にする必要はないので、ぴったりの位置で樹脂タップを固定できます。
接着剤を塗る前に、この位置がジャストだなというのをイメトレして確認しておきましょう。
これでちょうど良い位置にがっちり接着することができました。
一瞬で固まるとは言え、中までちゃんと固まっていないと思うので、5分から10分くらいは寝かせます。
待っている間は、確実に接着できるようにこうやってタップを地面に押し付けたりします。
⑤ 樹脂タップの側面整形
接着が終わったら、側面を整形していきます。
旋盤を使わずに樹脂タップの側面をきれいに整形することはかなり難しいのですが、以下の方法でやればぱっと見では旋盤を使ったのと大差ないレベルで仕上げることができます。
⑤-1 先角の養生
さっきと同じ要領で、ダブルクリップを使って養生します。
そしてダイヤモンドやすりで整形していくのですが、樹脂タップの下のエッジとダイヤモンドやすりのエッジがぴったり一致する位置に合わせてダブルクリップを固定します。
この位置↓です。
こうすることでやすりは先角に触れることはないので、ダブルクリップをガイドにしてやすりを前後に動かせば、樹脂タップだけを削っていくことができます。
⑤-2 側面整形
まずは粗く削っていきます。
1周ぐるっと削り終えた状態。
まだガタガタですね。
ポイント 先角よりも細く削ってしまわないよう、こまめに樹脂タップと先角の段差を確認しながら削りましょう。 |
2周目の削りが終わったところ。
まだ段差がありますが、1周目よりはきれいです。ここから仕上がりの形状を意識しながら削っていきます。
ポイント 仕上がりの側面が滑らかな曲面を描くように、シャフトをこまめにくるくる回しながら少しずつやすりをかけていきます。 こまめに回さずに削ると、曲面ではなく平面状に削れてしまい、タップの側面がカクカクと不格好になります。ちょうど上の1周目が終わったような感じになってしまうんですね。 |
3周目を削り終えた状態。もうほぼ完成ですね。ここから仕上げに入ります。
⑥ 樹脂タップ側面の仕上げ
ここまでの状態でも十分なのですが、側面の曲面をより滑らかにするため、紙やすりで仕上げます。
紙やすりは1500番~2000番ぐらいの目の細かいものを使います。
まずこうやって↓紙やすりを山折りにします。
そして、今度はこうやって↓この紙やすりを持って、シャフトをくるくる回して側面をならしていきます。
やすり面が先角に触れないように注意してください。
これで側面整形は完了です。
⑦ 樹脂タップのアール付け
あとはアールを付けていきます。ここは革タップとやり方は同じです。
せっかくなんで先日「タップシェーバーの自作方法【切って貼るだけ】」の記事で作り方を公開したタップシェーバーを使ってアールを付けていきます。
これ↓です。良かったら上の記事も読んでください。
アール付けが終わったら完成です!
別アングルでもう1枚。
おまけでもう1枚。
ぱっと見、旋盤なしでやったとは思えなくないですか?
もちろんよーく見たり触ってみたりすれば色々粗は見えてきます。
旋盤でやったほうがきれいなのは間違いないんですが、旋盤なしでもここまでできるんだったら、自分でやってみるのもありですよね。
ちなみに僕は今回この方法でほぼ先角は傷つけていないはずです。
それって大事ですよね!
2.樹脂タップ交換は自分には無理と思ったら
ここまで読んで、「自分には無理!」、「手作業じゃきれいにできないでしょ」って思った方、それが普通ですw
別の選択肢を2つ用意しましたので、参考にしてください。
(1) 工房に頼む
自分でやろうなんて考えず、最初から工房に頼むのがベストです。
ただ、ちゃんと旋盤があるところに頼みましょう。革のタップ交換と同じノリで、ビリヤード場の常連とかに頼んではいけません。頼まれたほうも困ると思います。
タップ交換をしてくれる店については、「ビリヤードのタップ交換をしてくれる店23選【店選びのポイントも】」の記事にまとめましたので、自分にはできないなと思ったら、ぜひこちらを読んでみてください。
(2) 簡易旋盤を買う
キュー製作もできるような本格的な旋盤は無理だと思いますが、タップ交換などの簡単なキューメンテナンスができる簡易旋盤ならお手頃価格で買うことができます。
「ビリヤードタップの座とは【役割は?つけると何が変わるの?】」でも紹介した若井製作所が「デザイヤ」という簡易旋盤を販売しています。
オプションの有無で価格は変わりますが、¥23,500 – ¥33,700で購入可能です。
ここまでする人はかなりの凝り性だと思いますが、これがあれば樹脂タップ交換でこんなに苦労することはありませんね。
3.まとめ
いかがでしたか?
樹脂タップの交換は普通のやり方ではできないので、基本的には工房に頼むのがベストです。
でも僕みたいに自分でやってみたい人、工房に頼むのが面倒くさい人はこの手順でやってみてください。
最初はうまくいかないかもしれませんが、何度かやってみればそれなりにできるようになると思います。
他にもこんな記事をまとめています。よかったら読んでください。
この記事が参考になった人はぜひシェアをお願いします!