ハイテクシャフトって種類が多すぎて違いがわからなくないですか?
シャフトを選ぶ時、プロがおすすめしているもの、周りの人の感想、ネットの口コミなんかを参考にしますよね。でもそこにはその人たちの主観が入っています。
プレースタイルが違えば、それにマッチするシャフトも違います。
この記事では、数あるハイテクシャフトの構造やテーパーなど客観的な情報から、それぞれの性能を見分け、その中から自分に合ったシャフトを選ぶ方法を紹介します。
買ったあとで後悔しないように、この記事を読んで自分に合ったシャフトを探してみてください。
この記事の内容 1.ビリヤードハイテクシャフトとは 4.【求める性能別】おすすめの人気ハイテクシャフト7選 |
1.ビリヤードハイテクシャフトとは
まずはハイテクシャフトって何?ってところから説明します。
(1) ハイテクシャフトとは|ノーマルシャフトとの違い
ノーマルシャフトが木から削り出された”棒”であるのに対し、ハイテクシャフトはただの棒ではなく、木材を貼り合わせたり、中心にカーボン等の芯を埋め込んだり、何らかの加工がされているものです。最近はそもそも木材ですらないカーボン製のシャフトも一般的に使われるようになってきています。
(2) ハイテクシャフトの構造
ハイテクシャフトの構造は、大きく分けると以下の3つに分類されると思います。
・貼り合わせ構造 ・先端構造 ・コア構造 |
補足します。
① 貼り合わせ構造
貼り合わせ構造のシャフトは、分割した木材を貼り合わせて作られています。分割枚数の多さは銘柄によって違いますが、分割の元祖のプレデターは10分割、アダムは4分割、8分割、12分割というバリエーションがあります。ジャコビーは64分割です。
② 先端構造
シャフトの先端を中空にしたり、そこに軽い発泡素材などを入れることで先端を軽くした構造のことです。キースアンディのMスペック(m-spec)シャフトが有名ですね。
③ コア構造
コア構造とは、シャフトの芯材としてカーボンなどの硬い素材を埋め込む構造のことです。この芯材をどれぐらいの長さ入れるかはメーカーやシャフトの銘柄によって異なります。
(3) ハイテクシャフトのメリット
なぜわざわざそんな構造になっているかというと、そうすることで以下のようなメリットがあるからです。
・トビが軽減される ・パワーが増す ・性能のばらつきが減る |
補足します。
トビが軽減される
まずは「トビ」について説明します。
手球にスピンをかける時、手球の中心よりも少し横をつきますが、その時に手球が横方向にはじかれて、正面から横方向にずれて進んでいきます。ぱっと見わからないくらいのずれですが、的球にあたる時には実はけっこうなずれになっていて、狙った厚みよりも薄く外れたり、厚く外れたりします。この手球の進行方向のずれのことを”トビ”と言います。
そしてこのトビをあらかじめ想定して的玉を狙うことを”見越し”と言います。
どの程度見越せば良いのか最初のうちはわからないと思います。キューの性能、その人の撞き方など色々な要因で変わってくるので、トビに対処することは難しいです。
このトビを軽減することがハイテクシャフトのコンセプトです。
ハイテクシャフトはキューの先端部分が軽くなるように加工されていますが、そうすることで手球の横を撞いた時に伝わる横方向の力を軽くして、トビを減らしています。
トビが減れば見越しの程度も少なくて済むので、シュートも楽になりますね。
パワーが増す
次に「パワー」について説明します。
”パワー”という言葉にも人それぞれ定義はあると思いますが、ここで言うシャフトのパワーとは手球に伝わる力のことです。同じ力で撞いた時に、手球が転がる距離が長いほうがパワーが大きいシャフト、短いほうがパワーが小さいシャフトということになります。
上でも書いたように、ノーマルシャフトは個体差のある木の棒です。あたりのシャフトなら良いですが、はずれのものだと木がスカスカだったり、柔らかすぎたりして、手球に十分にパワーが伝わりません。
そこで、木を貼り合わせたり、中心にカーボンなどの素材を埋め込むことで、シャフトの硬さを増し、手球に伝わるパワーを増幅させています。
シャフトにパワーがあるとなぜ良いのかというと、手球を長く走らせたい時に無駄に力んだりしなくて済むからです。強く撞こうとすると力みます。力むとストロークが乱れます。結果、ミスにつながります。パワーがあるシャフトを使っていれば、そんな場面も減るのでミスを減らすことができます。
性能のばらつきが減る
ノーマルシャフトは木から削り出した棒です。木には密度や硬さなど個体差があります。また木材は反ったり曲がったりしないように、十分に乾燥させてから使いますが、その乾燥のさせ方の程度でも個体差が出てきます。
ノーマルシャフトはあたり外れがあると言われますが、木を分割して貼り合わせたり、中心にカーボン等の芯が埋め込まれているハイテクシャフトは、その個体差を小さくすることができます。
とは言え個体差が完全になくなるわけではありません。カーボンシャフトですら個体差があります。わかりやすいところだと重さの個体差なんですが、同じメーカーの同じ銘柄のシャフトでも、重さが30g以上違うなんてこともよくあります。
その点に興味がある人は「ビリヤードシャフトの個体差|主要3社+αの全31商品」を読んでください。色々な銘柄のシャフトでどれぐらい重さに個体差があるのか調べた結果をまとめています。
(4) ハイテクシャフトのデメリット
いいことづくめのように思うハイテクシャフトにも以下のようなデメリットがあります。
・打感が硬い ・ノーマルシャフトより壊れやすい ・パワーがありすぎる ・トビが少なすぎる |
補足します。
打感が硬い
ハイテクシャフトは打感が硬くなる傾向にあります。貼り合わせの構造になっているものは、おそらく接着剤の影響で打感が硬くなります。また、芯に硬い素材が埋め込まれているものや、カーボンシャフトも打感が硬くなります。
それが何なの?って思うかもしれませんが、この打感の硬さを嫌う人は多いです。特にノーマルシャフトに慣れている人に多いと思います。
そういう人は、ハイテクシャフトを使うにしても打感が柔らかめのものを選んだり、タップや先角を柔らかいものにして、打感を調整しています。
ノーマルシャフトより壊れやすい
シャフトを貼り合わせたり、先端を軽くしたりと構造が複雑な分、ハイテクシャフトはノーマルシャフトよりも壊れやすいです。
よく聞くのが、貼り合わせ構造のプレデターの314シャフトが貼り合わせのラインに沿って裂けたという話です。あとビリヤード用品店の中古品などを見ていると、シャフトに埋め込まれた芯材が原因と思われる音鳴りがあるものが売られたりしています。
とは言え、こういうケースはそんなに多くはないと思います。
パワーがありすぎる
これはプレデターのREVOが流行ってからよく聞くようになったことですが、特にカーボン製のシャフトなどは人によってはパワーがありすぎるようです。
もともとストロークにパワーがある人がREVOのようなパワーがあるシャフトを使うと、思っていたよりも手球が転がってしまい、コントロールが難しくなることがあります。
トビが少なすぎる
これはノーマルシャフトのトビに慣れた人に多い意見だと思います。トビに慣れた人が、トビがほとんどないシャフトに移行すると、トビが無さ過ぎて球が入らなくなります。
慣れるまでにそれなりに時間がかかるので、こういう人はあえてトビがそれなりにあるハイテクシャフトを使ったりしています。
2.ビリヤードハイテクシャフトの見分け方
ハイテクシャフトを買おうと思っても、種類がたくさんあり過ぎて性能がどう違うのか見当もつかないと思います。レビューや口コミを参考にしても良いのですが、どうしても主観が入ってしまいますし、プレースタイルが違えば、感じ方も変わってくると思います。
ですので、メーカーが公開しているスペック表などなるべく客観的なデータから性能を見分ける方法を以下にまとめました。
材質と性能の関係 ・カーボンなど材質が硬いほど打感が硬く、パワーがある |
構造と性能の関係 ・貼り合わせ枚数が多いほど打感が硬くなり、パワーが増す ・先端が軽量化されているものはトビが少なくなるが、パワーが犠牲になる ・カーボンなど硬い芯材が埋め込まれているものほど打感が硬くなり、パワーが増す |
テーパー(太さ)と性能の関係 ・シャフトが太いほど打感が硬く、パワーがある ・シャフトが細いほどトビが少なく、スピンが乗る |
先角と性能の関係 ・先角が硬いほど打感が硬く、パワーがある ・先角が柔らかいほどトビが少なくなる ・先角が軽いほどトビが少なくなる |
ただし、シャフトの性能は、上記の各要素の組み合わせで決まるため、一概には言えません。
例えば、同じようなスペックのシャフトが2種類あり、一方は芯材に何も入っていない、もう一方はカーボンが入っているものがあった場合、「カーボンが入っているもののほうがパワーが強そうだな」という感じで判断材料にしてください。
テーパー、先角と性能の関係については、以下の記事に詳しくまとめています。
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3.自分に合ったハイテクシャフトの選び方
ハイテクシャフトと言っても万能なものはなく、性能は一長一短です。ですのでまずは自分のプレースタイルとシャフトに求める性能を考えてみましょう。そこを考えずなんとなくシャフトを選んでしまうと、自分に合わないもの買って失敗することになります。
こんな感じで選んでみてください。
見越しが合わなくて悩んでいる人 ひねりを多用する人 →トビが少ないシャフト |
ストロークのパワー不足で悩んでいる人 中心付近の撞点を多用する人 →パワーがあるシャフト |
上記のどちらとも言えない人 またはよくわからない人 →トビとパワーのバランスが良いシャフト |
見越し、パワー不足の両方で悩んでいる人 →カーボンシャフト |
で、結局どの商品を買えばいいの?
というところは次の章で説明します。
4.【求める性能別】おすすめのハイテクシャフト
上で説明したタイプ別に、おすすめのシャフトをまとめました。シャフト選びの参考にしてください。
(1) トビの少なさ重視ならこれ
「パワーはある程度犠牲にしてもいいから、とにかくトビが少ないシャフトがいい!」
そんなあなたにはこちらがおすすめです。
【Mezz】WX900
![]() | 価格:27,500円 |
構造 | 先端軽量化+内部支持構造 |
先角径 | 12.0mm |
対応ジョイント | 10山、18山、ラジアル、ユニロック、UJ、WJ 他 |
テーパーの細さと先端構造でトビを軽減しています。パワー不足はISSテクノロジーという先端の内部支持構造により補っています。
【プレデター】Z3
![]() | 新品価格:¥41,140から |
構造 | 10枚貼り合わせ 先端軽量化 |
先角径 | 11.85mm |
対応ジョイント | 10山、14山、18山、ラジアル、ユニロック、UJ、WJ 他 |
ここで紹介するシャフトの中でもっとも細いですが、この細さと先端構造がトビの少なさを実現しています。その分パワーは犠牲にしているので、ストロークのパワーには困っていないけど、見越しが合わせられなくて悩んでいる人におすすめです。
(2) パワー重視ならこれ
「トビはある程度あってもいいから、とにかくパワーがほしい!」
そんなあなたにはこちらがおすすめです。
【アダム】A.C.S.S PRO
![]() | ビリヤード シャフト Adam アダム ACSSプロ シャフト 3/8-10山 ムサシリング 価格:34,100円 |
構造 | 芯材に多重構造の特殊樹脂を内蔵 |
先角径 | 12.8mm |
対応ジョイント | 10山、14山、18山、ラジアル、ユニロック 他 |
アダムのシャフトは太めのテーパーなので、もともとパワーがありますが、芯材として埋め込まれた特殊樹脂でさらにパワーが増しています。
【プレデター】ヴァンテージ
構造 | 10枚貼り合わせ 先端軽量化 |
先角径 | 12.9mm |
対応ジョイント | 10山、14山、18山、ラジアル、ユニロック、UJ、WJ 他 |
![]() | ビリヤードシャフト Predator【プレデター】 シャフト ヴァンテージ ユニロックリング 価格:42,570円 |
ここで紹介するシャフトの中でもっとも太いテーパーですが、この太さと貼り合わせ構造でパワーを強化しています。
(3) トビとパワーのバランス重視ならこれ
「トビとかパワーとかよくわからない」、「トビもパワーもバランスが良いのがほしい」
そんなあなたにはこちらがおすすめです。
【Mezz】ハイブリッドプロⅡ
![]() | ビリヤード シャフト Mezz ハイブリッドプロ2 HP2/WJ 価格:37,400円 |
構造 | 先端軽量化 芯材にジョイント側から2/3まで2段階構造のカーボン内蔵 |
先角径 | 12.5mm |
対応ジョイント | 10山、18山、ラジアル、ユニロック、UJ、WJ 他 |
先端加工によりトビを減らし、カーボンコアによりパワーも十分、バランスの良いシャフトだと思います。
【プレデター】314-3
![]() | ビリヤードシャフトPredator【プレデター】シャフト 314-3 ラジアル 価格:42,570円 |
構造 | 10枚貼り合わせ 先端軽量化 |
先角径 | 12.75mm |
対応ジョイント | 10山、14山、18山、ラジアル、ユニロック、UJ、WJ 他 |
Z3とヴァンテージのちょうど中間という性能です。先角径はヴァンテージとさほど変わりませんが、テーパーの形状を全体的に細くしてトビを軽減しています。かと言ってZ3ほど細くはないので適度なパワーもあります。何かが突出しているわけではありませんが、バランスがよく扱いやすいシャフトだと思います。
(4) 全部ほしければこれ
「トビはないほうが良い、パワーもあればあるほど良い」
そんなあなたにこちらがおすすめです。
【プレデター】REVO
![]() | ビリヤードシャフト【送料無料】プレデターシャフト REVO 12.4 ラジアル|シャフト Predator (プレデター) 価格:71,060円 |
構造 | - |
先角径 | 12.4mm or 12.9mm |
対応ジョイント | 10山、14山、18山、ラジアル、ユニロック |
トビの少なさ、パワーとも最高レベル、314-3を全体的に底上げしたような性能です。ただし良いことづくめというわけではなく、トビが少なすぎるとかパワーがあり過ぎるとか、性能が良すぎるところが合わないと感じる人もいるようです。また、打感の硬さや見た目を敬遠する人もいます。
なお、カーボンシャフトの購入を考えているなら、こちらの記事も参考にしてください。
5.まとめ
いかがでしたか?
種類が多すぎて選び方がさっぱりわからなかったハイテクシャフトに対する理解が少しでも深まったら幸いです。ここで書いたような予備知識もなく、何も考えずに新商品に飛びついたり、身近な上手い人の真似だけで買い物をすると、高確率で失敗すると思います。高い買い物ですから、基礎知識を身につけて、自分に合った買い物をしたいですね。
記事の中でも紹介しましたが、ハイテクシャフトの性能を決める要素であるテーパーと先角についても記事を書いていますので、あわせて読んでください。
あとシャフトの重さも実はけっこう大事なんです。こちらの記事にまとめましたので、あわせて読んでください。
中古シャフトの購入を考えているならこちらもどうぞ。
以上です。よかったらシェアしてください。